アンティークソファの張替え
50年以上前のイタリア製のアンティークソファです。
木部の彫刻や背中のボタン締め、ソファ全体を一回りしている鋲など、非常に優雅でクラシックなソファです。
以前にも一度、張替えをされたことがあるとのことですが、数十年が経ち、生地の色も日焼けで色褪せていました。
また、座るとお尻が埋るほど沈み込みが激しいので、修理のご依頼をいただきました。
BEFORE
~分解~
まずはソファ全体に付いている鋲を外していきます。
木部に傷が付かないように慎重な作業です。
3人掛け×1台、1人掛け×2台で約1100個の鋲を外していきます。
右の図は鋲を外した状態です。
鋲を外しても生地はまだ張り付いたたままです。
生地を剥がすには更に留めてあるタッカーを外さなくてはならないので、2倍の時間が必要です。
生地を全て剥がすまでには、まだまだ時間がかかります。
鋲と表面の生地を剥がし終えた状態です。ウレタンは経年劣化でボロボロと朽ちてしまいます。
古くなったウレタンを取り除いて、下張りの確認をしていきます。
ゴムが木枠の下に垂れ下がっていて、伸びきっているのがわかります。
背中を下にして座面をチェックします。
座面のゴムは経年劣化で硬化して伸びきった状態です。
座った時に座面が沈み込み、お尻が落ちてしまうのはこれが原因です。
驚いたことに黒いゴムは自転車のタイヤのようです。
タイヤを割いて使用したようです。
50年以上も前のソファなので資材が不足していたのか、一度張替えをした際に補強で付け足されたのか、それは謎です。
~下張り~
新しいウェービングベルトを取り付けていきます。
沈み込みを軽減する為に、隙間なく張っていきます。
ベルトの取り付けが完了しました。以前と比べるとベルトの密度が半端ないです。これで座面の沈み込みも解消しました。
新しいウレタンを張っていきます。
中も表面も綺麗に張ります。
まずは、座面の下と肘の部分です。
背中のウレタンはボタン締めの為の穴が開けられています。
アンティークソファは、この穴が重要です。この穴によって綺麗なシワを出していきます。
穴を開けるための専用の道具です。
印をつけたところに押し当てると表面のウレタンに穴が開きます。
~裁断・縫製~
新しい生地を一つ一つ手作業で型を取って裁断していきます。裁断がずれると張りが変になります。
また、柄も合わせて裁断する必要があるので、技術が必要です。
裁断した生地を縫っていきます。
新品時を想像しながら、どこに何があったかを予測して縫います。表現力が必要ですね。
左の画像は座面のクッションカバーです。
~上張り(仕上げ)~
まずは座面下と肘から張っていきます。
最初に張るものが、他の張り合わせの基準になります。
最初に張るものがずれると後から張るものがずれてきます。
次に背中です。
ボタンで引き込んで絞りながら張っていきます。非常に手間のかかる作業です。
生地の張りが終わりました。残すは鋲の取り付けてです。一つ一つ打ち付けていきます。
鋲の取り付けも完了しました。
最後に座面のクッションを置いて完成です。
最後まで綺麗な状態を保てるように、チェックすることばかりです。
BEFORE
AFTER
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